ひとは「手をかけた」感を好意的に判断しがち。


この間参加した「タイポグラフィ基本講座」で
書体の選び方ひとつで「読ませる力」や整理整頓された印象を与えることができるということ、
逆に、チラシや街の看板にあふれている書体「創英角ポップ体」のことを思い出した。

大飯原発運転差し止め訴訟 弁護団の「巻物」にまで使われていた

 

創英角ポップ体、広まるきっかけは
マイクロソフトの「Office2000」の中に標準で入っていたから、と言う説が有力。
また、Officeの中に入っている書体の中でも
要素ごとの主張、情報量が多い書体なので
デザインを知らない・わからない人でも「手をかけた」感が出たと思ってしまう。
そのため、違和感を感じるところでも平気で使ってしまう…ということらしい。

 

――「手をかけた」感について、詳しく教えてください。

「手をかけた」感というのは、見た目から得られる、なにか凝った印象のことだと思ってください。画像やイラストの追加や、文字にふちをつける、影を落とす、背景に色をいれる、テクスチャをつけてみるなど、デザインの「密度感」や「情報量」を多くしていくと、見た目の「手をかけた」感が育っていきます。

創英角ポップ体は文字の太さが変わったり、傾いたり、濁点が丸くなっていたり、角が強かったりと、要素ごとの主張が非常に強いです。それはつまり、見慣れたゴシックや明朝体とは明らかに異なるディテール、情報量を持つフォントで、ひとめで違いが分かりやすいフォントといえます。

そのため、写真を大きくしたり文字の位置を変えたりといった手間をかけなくても、デザインの「密度感」、「情報量」を簡単に変えられます。さらに印象を強くしたければ、フチをつけて袋文字にする手もありますね。以上の点から、「手をかけた」感を手軽に出しやすいフォントだといえそうです。

――そのため創英角ポップ体が選ばれる、と?

あくまで仮説ですけれど、人は「なにかをやった」感を好意的に判断しがちです。「手をかけた」ことがそのデザインにおいて適しているのかはともかく、まず「手をかけた」感自体を評価するということです。

デザイナーが仕事としてデザインを行う場合、見た目の「手をかけた」感をつくる要素がコンセプトと合っているかが重要になるため、その部分を常に考えながら作業する必要があります。

一方、そうでない方々の場合、デザインした物を構成する要素とコンセプトとの合致よりも、デザイン以外の事柄でも評価軸として使われることの多い「手をかけた」感の有無が重視されがちなのかもしれません。

フォントから考える(1) 創英角ポップ体はなぜ街に溢れるのか? | マイナビニュース