読むヒップホップ。[ ECD – 失点・イン・ザ・パーク]

ひとり暮らしについて書いた本の中から、きょうはECD 「失点・イン・ザ・パーク」を紹介。

 

一生遊んで暮らせる人生。誰でも一度は夢見ることだろう。
この三年間の自分はそれに近かった。その結果がアル中である。
そして、今は余っている時間は同じだが、それをやり過ごすための金が無い。
金を遣わずに時間をやり過ごす闘い。それが僕の闘病だ。(本文 P.83より)

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90年代後半、著者のECDはラッパーとしてメジャーデビュー。
日本の音楽史に残るヒップホップイベント「さんピンCAMP」をプロデュース。
その成功もつかの間、快楽のまま自堕落な生活に溺れ、気付けばアルコール依存、精神病院への入院、鬱…。
レコード会社との契約の先行きも怪しくなり、
今までの生活にに見切りをつけようとハローワーク通いを始めるも、
好きなことだけして生きてきたこれまでの人生、気づけば家族も学歴もクルマの免許さえもない40男。
飼い猫のため、ホームレスにならないため、
身に不相応とは分かりつつも東京・下北沢の家賃11万円のアパートを維持するため、
メイクマネーしなければならない…。

 

独特な視点ながらも描写はリアルで淡々と綴られる。
ドラマチックな出来事も、アル中のきっかけになる過去の肉体労働の話も、
地元をあてもなく散歩するような何気ない日常描写も等価値に配置され、話のグルーヴを作っていく。
作中にも曲づくりのシーンがあるけど、
様々なレコードからサンプリングされた音の断片を組み立て、
一曲として成立させるヒップホップを文章で読んでいるかのような感じ。
あまり救いのないダウナーな話だけど読後には奇妙な高揚感が残る。