春日井コロナシネマワールドの終焉を看取る…。
正月にシャウ・シンチーの「人魚姫」を観に行った時に知った、
春日井コロナシネマワールドの閉館の知らせ。
…営業最終日、2/26(日)の最後の最後は何としても見届けたいという妙な使命感が頭をもたげる。
この日の最終上映は「天使にラブ・ソングを…」の無料上映会。
整理券を配布開始日の早朝から取りに走った。
初めて観に来たのは、名前がまだ「春日井コロナ会館」だった頃、親に連れてきてもらった
「ドラえもん のび太と鉄人兵団」か「ゴジラVSビオランテ」だったか忘れてしまったが、
家から自転車で10分という近さだったので、19の春に上京するまで、映画を観たのはここが一番多かった。
春日井コロナ、シネコンのはしりとは言っても、いくつかのスクリーンを除けば
シネマテークやシネマスコーレと変わらない、40席程度の小さなスクリーンばかり。
薄暗い町外れにぽつーんと建つ、パチンコ屋の上に映画館があるなんて
地元民にしかわからない、逆に地元民にこそ愛されていた映画館だったと思う。
当時は近所の名古屋空港もまだ国際線が発着していたので
着陸時にほぼ真上を通過するジェット機の轟音がうっすら聴こえてくるという、
お世辞にもいいとはいえない環境。
セントレアができてやっと静かになったと思ったら、
その跡地にできた最新設備のシネコン、「ミッドランドシネマ名古屋空港」のオープンがトドメに。
映画を観る環境に、よりB級感を感じたい時は春日井コロナのほうに行くことにしていたけど、
いつ行っても観客がひと桁、ほぼ貸し切りで逆に贅沢さすら感じるというありさま、
いつかこの日が来るであろうことは予感していた。
ちょっと年上の人に話を聞くと印象はさまざまで、「映画館が無くなる」というと、
郊外のシネコン隆盛とともに消えていった、我が街の映画館のことを思い出すので、
栄枯盛衰だよね…という意見も。
春日井コロナ周辺だと、東映まんがまつり上映期間以外の時期はエロ映画館だった
「上飯田パレス」(現在、跡地はパチスロ屋)の末期をギリギリ知っている世代だけど、
自分が郷愁を感じるのはやっぱ、ここ。
2Fの劇場入口へとつづく、急な階段を一段抜かしで駆け上がっていく時の期待感、
期待がハズレた時、予想以上にシリアスな話だった時は、逆にとぼとぼ降りていくあの体験が、
永遠に失われてしまうのはさみしい。
…閉館の時にかかる映画って定番ってあるんだろうか?
例えば「ニュー・シネマ・パラダイス」とか。
「天使にラブ・ソングを…」にしても「ミニオンズ」にしても
現状の春日井コロナになぞらえた、何らかのメッセージがあるような気がしてならないのは
深読みし過ぎだろうか。
最終上映は館内で一番大きなスクリーンでの上映。
上映前には、コロナワールドの常務によるセレモニーも。
大々的に告知はしていなかったものの、観客は7割ぐらいの入り。
春日井コロナで映画を見て育ってきたであろう、
劇場の33年の歴史を感じさせる、さまざまな年齢の近隣の映画ファンが集まっているような感じだった。
今日が閉館でもしんみりさせない、笑い声とポップコーンの匂いに包まれるひととき。
「天使にラブ・ソングを…」ナイスセレクトだったと思う。
あと、当然といえば当然なのかもしれないけど、
この規模のスクリーンで見る映画で「映画泥棒」のダンスを
強制的に鑑賞させられることがないのって、久しぶりかも…。
(ちなみに40席のスクリーンで観た「人魚姫」の時もなかった)
「近日上映御案内」のウインドウには次の映画の予告が貼られることもない。
このカーペット敷の長い階段も、もう二度と上り下りすることはできないだろう。
一段一段、踏みしめて帰った。