口ぐせのように言ってた頃[メガネ – 行けたら行く]

トラックメイカーが豪華なのと、
愛知出身というところに若干のシンパシーを感じたので、
OLラッパー「メガネ」のEP「行けたら行く/怒りのレタスチャーハン」を聴いてみました。

「怒りのレタスチャーハン」の脂こってこてなMVも衝撃だったけど

「行けたら行く」の一瞬先が全く予測できないJuke/Footworkのビート、凶悪なベースに乗っかる
ゆるふわなフロウ、自然体だからこそ出てきたリリックに、虚をつかれるような思い。

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今誰かに誘われたら飛んで行く それぐらいめっちゃヒマ
そんなとき あまり仲良くない友達からのコール
前言撤回 やっぱ無理 とりあえず忙しいフリ
行けたら行く つまんない飲み会より 空を飛んでみたい

行けたら行く それが口ぐせ
また連絡するって言って連絡しない
予定埋まってるって日は だいたいヒマ

気乗りしない誘いの電話やメールにはっきりと「行かない」ではなく
カドがたたないように、やんわりと軟着陸させ、
ちっぽけな自尊心を守った気になる返答、「行けたら行く」。
使うのがいいとか悪いとかじゃなくて
こんな言葉を使ってたころは今考えると贅沢、というか余裕だったなーと30過ぎて思う。

90年代、「東京」に飢えていた人に…[ここは退屈迎えに来て]

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地方で生まれ育ち、東京で暮らし、夢も希望もあったはずなのに
どういうわけか今はUターン。
カラオケで隣の奴が歌うEXILEを受け入れられず
どこまでいっても同じようなチェーン店が並ぶロードサイドをクルマでひた走りながら
カーステから爆音で鳴らすのは
地方都市で鬱屈してた90年代、10代の頃に自分の姿を重ね合わせ聴いていた
アイス・キューブとウータン・クランとか…(´;ω;`)ブワッ
ただ、クルマがあればまだマシな方で、
RPGの主人公は歩いてどこへだって行けるけど
現実の地方都市はクルマがなきゃ最初の村からも出られないクソゲー。
200万都市の名古屋ですら環状2号線を一歩越えるとそんな感覚、ありますね。

地方都市のロードサイド=ファスト風土の閉塞感とかいうとドンヨリしてくるけど
重苦しさだけでもない、登場人物のカラッとした笑える感覚は見習いたいところ。
かつてこの本の映画化の企画があった時に
広末涼子にオファーがあったらしいというのは皮肉な話だけど、
ちょっと見たかった。

「Relax」のB面はホラー。[カフェでよくかかっているJーPOPのボサノヴァカバーを歌う女の一生]

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20歳やそこらならともかく、35歳過ぎて夢を追い続けることの人生手遅れ感。
表現で食べていくことができないまま、自意識を引きずり、年ばかり重ねていった妖怪のような登場人物…。
鏡に映った自分を見ているような気がして、体中から嫌な感じの汗がジュワー…。
「relax」の復刊をきっかけに久しぶりに押し入れから出してきたけど、直視に耐えられずまたしても本をそっと閉じた。
読んだという事実を一刻も脳内から消去したいという「仲間」が少なからずいるのか、
このマンガ、Amazonの古本で山ほど出てますね…。

作者に対しては「relax」の妄想インタビュー企画なんかで活躍していただけに
完全に「あっち側」の人、成功者?なんて思ってたけど
表現をナリワイにするのって、
キラキラしているように見えて、相当な闇を抱え込むことにもなるのか…。

現実を見ろ、と言うのは確かに正論、
特別な自分でいたいだなんて、いい年こいて考えてることの滑稽さはわかっちゃいるけど
自分で選び取ったものに囲まれる人生に執着するあまり、スバルのクルマのCMのコピーのようには生きられない。
しかも作中のような「クウネル」オチも使えなくなった、こじらせ側の人はゾンビのように生き続けるしかないんですかね…?

relaxの1号限りの復刊にしみじみ。

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学生時代によく読んでいたマガジンハウスの「relax」、
アートやファッションだけでもない、サブカルもオタクも飲み込んだ紙面に惹かれ、
当時は信者か!ってぐらい毎月買ってたけど
今の「クウネル」ばりの余計なリニューアルについていけなくなり、ほどなくして休刊。

それが10年経って当時のスタッフの編集で1号限りの復刊…懐かしくなって買ってしまった。
心待ちにしていた当時の読者が相当数いるのか、ネットの本屋では在庫が瞬殺、
ひさびさに街の本屋で取り寄せ。

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復刊号の表紙、PP加工されてるんだけど、
逆に当時のザラザラした表紙の手触りの記憶が新鮮に蘇ってきたり。
買い忘れた号かってぐらい、中身の再現度も半端ない…。

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個人的に感慨深かったところは
今回の復刊、スバルの広告出稿で成立した企画みたいなので、
レガシィとアウトバックの記事広がスムーズに挿入されてるんだけど
その中に入っていたペーパークラフト。
たぶんあれってビースティ・ボーイズ特集号(2001/01)の付録の
マイアミベース・ジープのペーパークラフトへのオマージュが若干入っててニヤニヤしましたが
もう当時の読者は守りたいものができて、地に足付けて
スバルのクルマとか買っちゃったりしてる世代なんだよな…。

…一番おもしろい頃の4年分、実家の屋根裏に捨てずに取ってあるはずので久しぶりに読み返したい。

Eテレの「THE PUNCHLINE」にホロッと来ました…。

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「フリースタイルダンジョン」は毎週楽しみにしてますが
NHKの『Eテレ・ジャッジ』内の企画「THE PUNCHLINE」
恥ずかしながらいままでノーチェック、昨日、やっと知りました…。
ポッチャリモデルが生き様を証明するラップ、もうハンカチなしには観れねえ…。

「THE PUNCHLINE」概要
全くの素人が
「フリースタイルダンジョン」の出演者クラスの
有名ラッパーの元で指導を受けながら
一週間という短い時間の中で自分の思いを込めたラップを
作り上げ、披露するという5分間ドキュメンタリー。

 

「リンカーン」で中川家 剛がラップする企画から9年、
NHKがラップの番組を、しかもEテレでやっちゃう時代。
今のお笑いとか格闘技みたいに
ラップがエンターテイメントの一角に躍り出るなんて状況もそう遠くないのかもしれないな…。

ちなみに「THE PUNCHLINE」、NHKの公式サイトで無料で視聴できますので、ぜひ。